ガラスのむこうに

あなたは飾り窓の女というものを見たことがあるだろうか? オランダのアムステルダム駅に向かって右側に、レッド・ライト・デストリクトと呼ばれる地域があって、日本にかってあった赤線地帯と一致する。そこにはまた、マリファナを合法的に吸引できるコーヒー・ショップもあり、様々な品種の大麻を購入できる。通りや建物によって窓の形もまちまちだけど、いずれにしてもガラス窓の向こうには、女性が待ちかまえていて、もしカーテンが引かれているのなら、仕事中ということらしい。アフリカ、アジア、東欧、南米、世界中の女性の見本市のよう。歌舞伎町のように猥雑で人間臭い歓楽地帯だ。

私が驚いたのは、オランダの地方都市で見た光景だ。とある雨のそぼ降る日、ランチを摂るために車で市内の中心を走っていた。田園地帯の新興都市だから、建物と建物との間隔も広く、樹木が沢山植えてある。そんな緑の中にBMWのショールームや新しいスーパーマーケットがあり、同じ並びに透明なガラスの立ち体がちょうど大人の目の高さに浮かぶよう立っていて、中では美しいマネキンが椅子に腰掛けている。でもそれは実は生身の女性で、これもまた一種の飾り窓の女ということだった。それにしても白昼の衛生的な新興都市の大通りで、電化製品や車と同じようにして女性を売っている光景に、私は驚いたのだった。